善意で貧困はなくせるのか? 貧乏人の行動経済学
今年読み終わった最初の本。当たりでした。発展途上国の貧困を解決するために、善意のお金をどのような目的にどういうふうに使えば最も効果的なのか、行動経済学の知見を応用した政策を実施して検証します。
マイクロクレジット、貯蓄促進、新たな農業技術の普及、子供の就学率の向上、健康状態の改善、HIVの予防などを目的とした政策の効果を「ランダム化比較試験」によって検証ていきます。
例えば、毎年多くの人が不衛生な水を飲むことで下痢になり命を落としているので、水を浄化するための塩素剤の使用を普及させたいとすると、そのためにはどういう手法が最も効果的なのかを実際に試してみます。
手法1:無料で配り、村で塩素消毒の重要性を訴えるセミナーを行う
手法2:無料で配り、村でキーとなる人に実際に使ってもらい宣伝してもらう。
手法3:共同井戸の横に塩素剤のディスペンサー(無料)を設置する
手法4:無料で配る
ランダムに選んだ村でそれぞれの手法を適用し、手法4のたんに無料で配ったグループ(対照群)と比べてどれだけ下痢になる人が減ったのかを調査します。この例では、手法3が水を汲んだその場ですぐに塩素を利用できるということで最も効果があったそうです。
現場に行って現場の人の話を聞いて政策を立案し、実際にやってみて施策の効果を「ランダム化比較試験」によって厳密に検証する。効果があったものについては範囲を拡大して実施する。こういう手法は日本でもどんどん使えないかと思う。
この本のいろんな所で触れる二面戦略は、強力な経済学的ツールだ。僕は開発経済学を教えるときは、学部でも博士課程でも必ずこれを使っている。その場合は三つの質問を柱にディスカッションを組み立てる。第一の質問は、「問題の根本原因は何か?」だ。行動経済学と従来の経済学、両方を使ってこの問いに答えること。この本でも僕たちの第一の戦略はこれだ。次にもう二つ質問する。「政府の政策であれ、非政府組織の介入であれ、ビジネスであれ、目の前にある<アイデア>は、実際に問題を解決しているか? そして、そのおかげで世界はどれくらい良くなったか?」。厳しい評価を使ってこの二つの問いに答えることが、第二の戦略だ。
目的も定かでなく、効果的な手法なのかもよくわからないまま、ただやっているふりしてるだけの施策があまりにも多いように思います。
- 作者: ディーン・カーラン,ジェイコブ・アペル,澤田康幸(解説),清川幸美
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2013/02/09
- メディア: 単行本
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貧乏人の経済学:http://d.hatena.ne.jp/benton/20130627/p1