ザ・グレート・ゲーム

 「歴史が後ずさりするとき」の中で、ウンベルト・エーコが、ソ連崩壊によって東欧から中央アジアの範囲では最近の地図は全く役に立たなくなった。国の有り様が100年前に逆戻りしてしまったと言ってるところでこの本に触れていた。

 

時は19世紀、なんとか領土を南に広げて海の到達したいロシアと、それを妨げようとするイギリスとの100年にわたる勢力争いがテーマです。地学調査、経済協力ミッションと称して双方がスパイを送り込んだり、軍隊を派遣したりと手段を選ばぬ植民地獲得競争の様子が綴られます。

 

ロシアはペルシャからコーカサスを奪い、カザフスタントルキスタンなどの中央アジア諸国を支配下におきパミール高原からインドへ至る道を探る。今の中国の新疆ウイグル自治区へも軍隊を派遣する。さらに、シベリア鉄道を建設し、中国東北部満州へも食指を伸ばしていきます。対するイギリスは、ロシア南下の防波堤としてペルシャアフガニスタンを自分の影響下に置こうとします。また、日露戦争に突入した日本の後ろ盾となります。

 

ロシアもイギリスも自国の勢力範囲を守るためなら、現地の国など単なる駒の一つに過ぎない。役に立つなら利用するし用がなくなれば躊躇なく捨てる。日本もグレートゲームの盤面の駒の一つに過ぎなかったのかと思えてきます。

 

いろんな国が登場しますが、中でもアフガニスタンは凄まじい。ロシア、イギリスの双方とも直接支配しようとして手痛い目に遭っている。イギリスは駐屯した舞台が現地で反乱に会いほぼ全滅している。

 

ロシアとチェチェンの問題。旧ソ連アフガニスタン侵攻、イランのイスラム革命チベットと中国の問題、カシミール地域の帰属をめぐるインドとパキスタンの争い、9.11以降のアメリカのアフガニスタンイラクでの戦い。これらは元をただせば全部ザ・グレート・ゲームにつながっていく。

 

中東、中央アジア情勢の背景を頭に入れたい人にオススメです。

ザ・グレート・ゲーム―内陸アジアをめぐる英露のスパイ合戦

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