アメリカは食べる アメリカ食文化の謎をめぐる旅

「食べたくなる本」で紹介されていた本。アメリカの食べ物に関する情報が盛り沢山なのは当然として、食べ物を通じてアメリカという国の成り立ち、歴史を知ることができる良い本。
 
クラムチャウダー、ミネストローネ、チキンヌードルスープ、フライドチキン、ジャンバラヤガンボスープ、コーンブレッド、グラノラ、ドーナツ、スパム、バーベキュー、ケチャップ、ハンバーガー、PJサンド、ポークビーンズハッシュドポテト、ステーキ、ミートボールスパゲッティ、缶詰などなど。
 
これらの食べ物の起源をアメリカへの移民の歴史と重ね合わせて説いて行く。移り住んできた順に並べると、メイフラワー号でやってきたイギリスからのの人々、スペイン系、フランス系、黒人、ドイツ系、アイリッシュ系、イタリア系、東欧系、アジア系。彼ら移民たちがアメリカで手に入る材料を使い何とかして故国の味を再現しようとして、変化し根付いたの料理の集合体がアメリカの料理だという。だから、正統的な故国の料理とはズレる。商売として成り立たせるためには、出自が異なる人たちにも受け入れられるように、微妙なところは省いて、わかりやすい味に寄って行く。照り焼きは醤油味と甘さが強調されすぎて、みたらし団子のタレのように変化する。アメリカで働いていた時に、中国からの移民の女性が「アメリカの中華料理には繊細さがないのよね。」とこぼしていたことを思い出す。
 
それを故国から見て「アメリカの料理はまずい。」というのは簡単だけど、そうなるしかなかった理由があるのだ。
 
次に著者は、アメリカでは地域独自の料理が発展しないのか、料理が画一的なのかについて考察する。次々とアメリカにくる移民たちが、より暮らしやすい土地を求めて開拓民として西へ西へと移動して行ったことや、国自体が広すぎて、鉄道による物流で画一的な味を届けるしかなかったこと、軍隊で皆同じようなレーションを食べたことなどを挙げている。
 
そして、アメリカに暮らす人たちは、アメリカ人になる、アメリカ人として認められるために食べる。自分の出自はとりあえず置いておいて、既存の典型的なアメリカの食べ物を受け入れることで、アメリカ人になるのだ。さらに、機械の平等、公正な社会というアメリカ社会の理想というか建前の象徴として、みんなと同じものを食べる。どんな金持ちも大統領も庶民と同じものを食べることが良いことなのだ。
 
最近、トランプ大統領が大学のフットボール優勝チームをホワイトハウスに迎えるにあたり、大量のハンバーガーを用意したという記事があったが、あれは、政府機関の閉鎖という事情があったとはいえ、あながち失礼な話ではなくて、返って大統領の支持者の好感度をあげる方に効いているのかもしれない。

 

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅