魂の錬金術 全アフォリズム集

 アフォリズムとは、短い言葉で、人生・社会・文化などに関する見解を現したもの。警句、箴言、格言。

 

エリック・ホッファーは、ナチススターリン全体主義、人々が自ら進んで独裁者に熱狂する状況について何度も語っている。

プライドを与えてやれ。そうすれば、人びとはパンと水だけで生き、自分たちの搾取者をたたえ、彼らのために死をも厭わないだろう。自己放棄とは一種の物々交換である。われわれは、人間の尊厳の感覚、判断力、道徳的・審美的感覚を、プライドと引き換えに放棄する。自由であることにプライドを感じれば、われわれは自由のために命を投げ出すだろう。指導者との一体化にプライドを見出せば、ナポレオンやヒトラースターリンのような指導者に平身低頭し、彼のために死ぬ覚悟を決めるだろう。もし苦しみに栄誉があるならば、われわれは、隠された財宝を探すように殉教への道を探求するだろう。

 

ある国民の愛国的熱狂は、彼らが享受する自国の福祉や政府の公正さに、必ずしも直接呼応するものではない。ナショナリストが持つプライドは、他のさまざまなプライドと同様、自尊心の代用品になりうる。それゆえ、政府の政策や歴史的事件が、国民一人ひとりの自尊心の形成と維持を困難にするとき、国民全体のナショナリズムが一層熱烈かつ過激になるという逆説が生じる。ファシズム共産主義の体制下にある民衆が盲目的愛国心を示すのは、彼らが個々の人間として自尊心を得ることができないからである。

 

同じことを昔誰かに言われた気がする。テレビや新聞の報道や噂話で、「こいつアホか。」と思う人がいても、当事者は自分と同じ程度のことは既に考えていると思った方がいい。だから、図に乗ってバカにするなと。

人は見た目以上に頭脳明晰で、見た目ほど神経質でないと思えば、ほぼ間違うことはない。

 

これ自分のことやなと思った一言。

「何者かでありつづけている」ことへの不安から、何者にもなれない人たちがいる。

 

歳をとることは、普通になることである。老齢は人間を平等にする。われわれは、自分に起こったことが、歴史上、数え切れないほど起こってきたことに気づくからである。若いとき、われわれは世界最初の若者のように振る舞う。

 

若い若いと思っていたけれど、下手すると老人の方かも。

激烈な変化によって技術や体験が時代遅れなものになるとき、大人と青年の境界は曖昧になる。にもかかわらず、世代間対立が最も激しくなるのはおそらくこのときである。何も知らない若者たちは、絶望的な苦境に陥る。他方、老人たちは真理を保持しているという確信を失い、分別だけを説く無意味な存在となる。

 

表紙の、ちびた鉛筆を持って本の抜き書きをしている著者の写真がいい。手元に置いて、時々読み返したくなる本です。

 

魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集

魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集