失われた時を求めて(4) 花咲く乙女たちの影に

ノルマンディー地方の避暑地バルベックで過ごし一夏を600ページ以上にわたって詳細に語る。祖母と汽車でバルベックに向かって出発し、一晩かけて避暑地に到着し、ホテルに入る。ホテルの部屋に入った時の、部屋になじまない感じ、違和感、よそよそしさが、部屋に飛び込んでくる日差し、飾り棚に映り込む海の景色の描写にのせて詳細に綴られる。文章にして目の前に突きつけられると、あーそうそう、初めての部屋に住んだ時に、そんな風に感じる。でも、この作品を読まなければ意識することがなかった感覚だ。
 
何か大事件が起こるわけではない。せいぜいが、バルベックで仲良くなった少女、アルベルチーヌにキスをしようとして肘鉄を食らわされるくらいだ。しかし、読んでいるうちに自分の過去に向き合わずにいられなくなる。