失われた時を求めて(4) 花咲く乙女たちの影に
ノルマンディー地方の避暑地バルベックで過ごし一夏を600ページ以上にわたって詳細に語る。祖母と汽車でバルベックに向かって出発し、一晩かけて避暑地に到着し、ホテルに入る。ホテルの部屋に入った時の、部屋になじまない感じ、違和感、よそよそしさが、部屋に飛び込んでくる日差し、飾り棚に映り込む海の景色の描写にのせて詳細に綴られる。文章にして目の前に突きつけられると、あーそうそう、初めての部屋に住んだ時に、そんな風に感じる。でも、この作品を読まなければ意識することがなかった感覚だ。
何か大事件が起こるわけではない。せいぜいが、バルベックで仲良くなった少女、アルベルチーヌにキスをしようとして肘鉄を食らわされるくらいだ。しかし、読んでいるうちに自分の過去に向き合わずにいられなくなる。
失われた時を求めて(4)――花咲く乙女たちのかげにII (岩波文庫)
- 作者: プルースト,吉川一義
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/06/16
- メディア: 文庫
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