失われた時を求めて(1)(2)

 最初はスワンはオデットのことをそれほど好きという訳ではなかった。スワンはわざと冷たく接して焦らしたり、手紙に返事を出さなかったりと強気の態度で接して、オデットを弄ぶ。ところが長く付き合ううちに立場が逆転する。あなたのためにいつでも時間は開けてあると言っていたのに、今日は観劇だ、友達にお茶に誘われていると会えない日が続く。そうなるとスワンは気が気でない。オデットの行動を知りたいと後をつけたり、約束もなしに不意に家を訪ねてみる。そのうちにスワンの頭の中はオデットのことで頭がいっぱい。何もしないで毎日オデットのことだけ考えて廃人のように暮らす。オデットに冷たくあしらわれ、焦らされて、時々優しくされてどんどん沼にはまっていく。もう、スワンは身を滅ぼす、というところで、スワンは気がつく。「あっ、俺それほどオデットのこと好きでなかったんや、あんまり好みの顔じゃないし。」

 

最初は19世紀末のパリの街や人の固有名詞がたくさん出てきたり、細かい心理描写がまどろっこしくて頭に入ってこなかったけれど、落ち着いて読むと、糸を針の穴に通すように過不足のない絶妙な表現であることに気づいた。

 

時間をかけてじっくり読みたい本だ。

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI (岩波文庫)

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI (岩波文庫)

 
失われた時を求めて(2)――スワン家のほうへII (岩波文庫)

失われた時を求めて(2)――スワン家のほうへII (岩波文庫)