なぜ世界は存在しないのか
全ての事物や空間、人間が考えたことなどありとあらゆるもの全てを含んだ「世界」は存在しない。なぜなら、世界の外に世界に相対して、世界を意味付ける何かがないことには世界という言葉の意味が定まらないからだ。あるものの意味はそれ単独では定まらない、他の何かとの関係性によって決まるからだ。
となると、何もかも、全てを含む「世界」というものを意味付けることはできない。世界の外に世界と相対するものがあるのなら、それは世界に含まれることになるからだ。
様々な意味を成立させる場がたくさんあるのであって、世界という実態が、ポンと一つある訳ではない。
物事の関係性で決まる意味の場があるだけなのだが、全ては相対的であって事物は実在していない、ただ我々にそのように立ち現れているだけなのだ。というのでもない。確かにそこに林檎は存在するし、地球も太陽も宇宙も存在する。科学的手法により確かめられる事象は確かに存在する。他の人と合意できる概念は存在する。
著者は、事物だけ存在して概念は脳の中の化学反応の状態に過ぎないと言うのでもない。反対に、事物そのものは全く存在しておらず、我々がそのように頭の中で構築しているだけという立場でもない。個別の意味の場において事物は実在する。そんな意味の場がたくさんあるのだ。