大暴落 1929

ここ2ヶ月ほどの生産の落ち込みは、パニックといってもいいくらいのものです。ここ数年好調で経済を支えてきた、自動車、工作機械、建設機械が同時に受注が激減しているようです。今のところ、どこまで落ち込むのか想像もつきません。


1929年の大暴落とそれに続く恐慌について、当時との共通点、違いについて考えてみるために読んでみました。


バブルとその崩壊というプロセスは、17世紀のオランダのチューリップ・バブル以降何度も繰り返されてきたありふれたことで、1920年代のアメリカの株バブルも、珍しいことでないといいます。

最初は値上がりから始まる。株でも不動産でも美術品でも何でもいい。すると世間が注目し、買い手が群がるそうなれば価格は一段と上がる。買う行為そのものが価格を押し上げ、値上がり期待を現実にするわけだ。これが続くと、市場を楽観視するのが当たり前になる。そうなれば価格はますます上がる。そしてある日、終わりがやってくる。一体なぜなのか、原因を巡って果てしなく議論が続くだろう。終わりは、つねに始まりよりも突然である。針を刺された風船がしずしずとしぼむはずがない。


問題は、株の大暴落に続いてどうして大恐慌が起こったかです。1933年のアメリカの国内総生産は1929年の3分の2まで落ち込んでいます。金額ベースで1929年の水準にまで回復したのは1941年になってからです。実に10年以上にわたって恐慌の影響が続きました。著者は大暴落の原因を説明するほうが、その後の大恐慌を説明するよりはるかにやさしいといいます。バブルはいつかは必ず終わるものであって、わからないのは、いつまで続くのかということだけです。


では株の大暴落に続いて、どうしてあれほどまでの実体経済の崩壊が起こってしまったのか、原因ははっきりしていないといいながらも次の五つの要因を挙げています。


1 所得分配
総人口の5%を占める最高所得層が、個人所得総額の3分の1を手にしていた。所得分配が著しくかたよると、高所得層の贅沢品消費への依存が高まり、株の暴落の影響を受けやすくなります。


2 企業構造

企業構造の最大の欠陥は、持ち株会社投資信託という新種の経営形態と密接に結びついている。

銀行が、社債による借り入れと株への出資で、投資投資信託会社を作り、その投資信託会社が同じように別の投資信託会社をつくり、それがさらに別の投資信託会社を・・・と連鎖させることで、株の値上がりにレバレッジを効かせていたそうです。階層の下流の会社の株が上がれば、それ以上に上流の会社の株
が上がる仕組みです。これが株の暴落とともに、負の連鎖を始めた。→設備投資しようにも金を借りれなくなった。


3 銀行システム
当時の銀行は経営基盤が億弱だったこと、預金保険などの仕組みがなかったために取り付け騒ぎの連鎖があっという間に拡大して、銀行システムが崩壊、個人の預金が消えてなくなることになった。


4 対外収支
第一次世界大戦中にアメリカは純債権国になっていた。貿易収支も黒字であった。諸外国の赤字を埋め合わせつつ、経済活動の水準を維持するには、アメリカが輸入を増やすべきだが、国内産業の保護のため実現せず、外国はアメリカからの輸入を急激に減らすことになった。また、大暴落に伴い、諸外国への融資もストップし、債務のデフォルトが多発した。


5 専門家の経済知識
財政を均衡させるべきという経済顧問の進言に共和党も民主党も賛成。猛烈なデフレの状況にも関わらず、財政均衡にこだわり歳出削減。インフレを心配して利下げも行われなかった。


1929年と今の状況を比べて、


1のアメリカの所得分配の状況は、2008年と1929年の所得分配の状況のデータがないので ?。この20年間格差は広がっているというものの、どの程度でしょうか。2の企業構造の問題は、負の連鎖という意味で、サブプライムローンCDSに置き換わっただけのように思います。3の銀行システムについては、現在は銀行の経営基盤が強く国の保護もある。また、預金保険で個人の預金を保護する制度があるので、状況はずっといい。4の対外収支は、アメリカの消費を支えるために、輸出超国である、日本や中国、中東が金を出し続けられるか?。 アメリカに変わる消費の受け皿になりえる国はあるのかも?。5の専門家の経済知識は、流動性確保のために、政府、中央銀行はありとあらゆる手を使っているので○。日本の話ですが、3年後の消費税増税を一生懸命アピールする所などみると、?。

大暴落1929 (日経BPクラシックス)

大暴落1929 (日経BPクラシックス)