粘菌 その驚くべき知性

粘菌とは、山の枯れ木や落ち葉の下にいるアメーバ状の単細胞生物です。彼らにとって快適な環境条件ではアメーバ状になり、乾燥などして条件が悪くなると胞子となって身を潜めるそうです。


そんな粘菌に、記憶する能力や迷路を説く知性がある、その実験の過程を明らかにしていきます。入口と出口にえさを置いた迷路に粘菌を放つと、粘菌は最短経路だけを残して他の部分は消滅させてしまいます。この能力を応用すると、実際の地図での経路検索もできるそうです。


太い、または短いことで、抵抗の少ない流路にはどんどん細胞の原形質が流れ、更に太くなる。細くて長い流路は、原形質の流れが小さくなり、ますます細くなる。こんな単純なルールで、粘菌が活動することで、迷路を説いてしまうのです。(詳しくは本書を読んでください。)


その他にも、粘菌に30分毎に不快な刺激を何回もあたえていると、30分の周期を記憶して実際に刺激しなくても、刺激したのとおなじような反応を何回かするようになることが説明されています。こちらは、たくさんの振り子の共振をつかって記憶のメカニズムを説明しています。


単純な機械的な仕組みで、見かけ上知性をもった行動をしているように見えるのが面白い。粘菌の能力の高さに感心すると同時に、知性とか、意識ってなんだろうと思いました。粘菌はじっくりと見たことがない。今度、山に行って探してみよう。息子の夏休みの自由研究の課題にもいいかもしれん。

粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)

粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)


粘菌といえば南方熊楠昭和天皇も研究していました。熊楠が昭和天皇へキャラメルの箱に粘菌を入れて献上したエピソードが有名です。熊楠についてはこちらの本が好きです。
http://d.hatena.ne.jp/benton/20080114/p2

森のバロック (講談社学術文庫)

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