アラブの歴史 上
アラブ人自身による、アラブの歴史全体を網羅した歴史書の決定版です。初版が1937年、ここから1970年まで改訂を重ねています。上巻は古代からアッパース朝までをカバーします。
イラク、イラン、トルコ、パレスチナ、シリア、エジプト、パキスタン。どの地域がどう違うのか、アラビア半島の歴史およびイスラムの歴史と、それぞれの地域の関わりを通して整理することが出来ました。
正直言って、読んでそんなに面白いものではないのです。何度読んでも頭に入ってこない人の名前と地名の連続です。細かいことは気にしないで、ざっくりと概要をつかむつもりで半分居眠りしながら読んでみました。頭に残ったことは、
・古代には、南アラビアが乳香や没薬など香料を産出する土地として、経済的に繁栄でていた。
・ムハンマドが主に活動した、アル・ヒジャースと呼ばれるアラビア半島の西側は、アフリカや地中海と南アラビアを結ぶ通商路として繁栄していた。ただし、文明から遠い辺境の地だった。
・ビザンツ帝国、ササン朝ペルシャが衰退した時期に、イスラムが勃興し一気に版図を拡大した。
・政治的に支配したものの、イスラム教が占領地に浸透していくには200年以上かかっている。
・当初は同じ一神教ということで、ユダヤ教徒、キリスト教徒に対しては、貢納金さえ支払えば自分たちの宗教を信じていくことを認めていたこと。当初は、ユダヤ教徒やキリスト教徒の方が文明に近く、政治の実務を彼らに任せざるを得なかった。
→パレスチナ、レバノン辺りでは、1300年以上にわたって、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が時々もめながらも共存してきたようだ。
・ムハンマドの死後100年も経たないうちに、スンニ派とシーア派の対立が始まっていたこと。
・イスラムは、もともとの出自が砂漠の遊牧民であるため、文明的には遅れていたが、貪欲に古代ギリシャの文明を引き継ごうとした。現在に古代ギリシャの文献が伝わるのは、イスラム教徒が翻訳したことによる貢献が大きい。
ともかく、私にとって、この本を読んでの一番の収穫は、「乳香」と「没薬」って何なの?とい疑問がようやく解けたことです。キリストの生誕劇で、東方の三博士が生誕のお祝いとして持参するのが、黄金と乳香と没薬です。そのうちの乳香は、乳製品から作るお香だと思っていましたし、没薬は、毒薬みたいなものかしらと思っていました。両方とも、木の樹液から作られるお香だそうです。没薬はミイラを作る際の防腐剤としても使われたそうです。
写真でイスラーム:http://mphot.exblog.jp/8886926/
- 作者: P=K=ヒッティ,岩永博
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1982/12
- メディア: 文庫
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