日本インターネット書紀 この国のインターネットは、解体寸前のビルに間借りした小さな会社からはじまった

インターネットイニシアティブ(IIJ)の創業者であり、現会長の鈴木幸一さんが、IIJを立ち上げてからこれまでの歩みをまとめた本。


エンジニアに担がれてIIJを立ち上げたのが1992年の12月。日本で始めてインターネット接続サービスを開始できたのが1994年の3月。その間、1年数ヶ月。郵政省に通信事業者としての登録を受理してもらいために七転八倒する。そのころの通信事業者と言えばNTTにKDD、自由化後に新規参入した企業もトヨタや電力会社など大資本の企業ばかり。資本金1800万の小さな会社が、しかもインターネットというその頃ほとんど誰も聞いたことのない事業を始めるといっても相手にしてもらえなかったそうだ。


その頃、金策のために訪問した銀行の人との会話

「ところで、そのインターネットとやらは、いま、どれくらいの人が使っているの?」
「日本では、研究者を中心に1000人程度ですかね」
「1000人単位で通信ですか」
「10年後には、最低でも3000万人は使うようになります」
小野寺さんはけらけらと笑い出した。
「3万倍ですか。そこまでの法螺は、なかなか聞けないなあ」
数字の根拠はともかく、私にとっては法螺でもなんでもなかった。
結局、私の思い込みは当たらなかった。10年後の2003年、日本のインターネット人口は7700万人を超えていたからだ。


1991年ごろ、私は働きだしてパソコンで仕事はしていたけれど、インターネットという言葉は聞いたことなかった。多分ほとんどの人は知らなかっただろう。そんな中、インターネットの将来に確信を持っていたとは言え、役所を説得し、一方では、資金繰りに追いつめられながらもなんとか事業開始にこぎ着けた苦労は並大抵ではない。


たった、20数年前のことだけど、生まれた時からネットがある人には想像もできない話だ。ダイヤルアップ接続のピーヒャラヒャラという音を懐かしく感じる人におすすめ。


本に音楽、お酒、タバコが好きな鈴木さんの本。高校をサボって上野公園で暇つぶししていた話がお気に入り。
言葉の水割り    http://d.hatena.ne.jp/benton/20130429/p1
鈴木幸一の文明評論 http://d.hatena.ne.jp/benton/20120902/p1


毎週火曜日更新。鈴木さんのブログ
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