阿含経典 3
増谷文雄が阿含経典の中から重要なものや、釈尊の言葉をよく伝えている文章をを選んで解説し現代語訳したもの。中部経典と長部経典、釈尊の入滅を扱う。
中部経典の一夜賢者経から、
過ぎ去れるを追うことなかれ
いまだ来らざるを念うことなかれ
過去、そはすでに捨てられたり
未来、そはいまだ到らざるなり
されば、ただ現在するところのものを
そのところにおいてよく観察すべし
揺るぐことなく、動ずることなく
そを見きわめ、そを実践すべし
ただ今日まさに作すべきことを熱心になせ
たれか明日死のあることを知らんや
誠に、かの死の大軍と
逢わずというは、あることなし
よくかくのごとく見きわめたるものは
心をこめ、昼夜おこなることなく実践せん
かくのごときを、一夜賢者といい
また、心しずまれるものというなり
入滅の際の、釈尊の最後の言葉
諸法は壊法である。放逸なることなくして精進せよ。
大事なところを選んでいるので、口伝えで受け継がれてきた文章独特のしつこいくらいの繰り返しの部分が省かれている。元々の経典のリズムを感じられないけれど手っ取り早く理解するにわかりやすい。
原始仏典を一通り読んで感じるのは、釈尊の教えは全然古びていないということ。心穏やかに過ごすためにどうすればいいのか、その実践方法は今でも十分に通用する。