キッチン・コンフィデンシャル

 著者のアンソニー・ボーディンはディスカバリーチャンネルの「アンソニー世界を食らう」という番組の予告で見て、面白そうな人だなと思っていたが、番組自体はじっくり見たことはなかった。今年の6月に彼が自殺したと聞いて気になったので、著書を読んでみた。

 

内容は、アンソニー・ボーディンの料理との関わりを綴ったもの。子供の頃にフランスの親戚の家で、牡蠣棚からあげたばかりの生牡蠣を食べて、あまりのうまさに衝撃を受ける。この体験が料理の道へ進むきっかけになったという。

 

彼の料理人としての経験を語っていく。それが、結果としてレストラン業界の内幕を暴露するような内容になっている。レストランで月曜日に魚料理を頼むなとか、スペシャル料理は残り物の食材を使い切るために設定されるので気をつけろというような、裏話。あるいは、ドラッグやアルコールまみれで、食材の横流しや、ネコババが当たり前な料理人の世界。

 

ひどい内容なのだけれど、読んでいてそんなに嫌な気持ちにならないのは、著者が料理の世界を最高だと思っているのと、淡々とした語り口のおかげだろう。淡々としているけれど、ディテールは細かいところまできっちり描く。東京の寿司屋で、夢中であらゆるネタを食べ尽くす場面に引き込まれた。

キッチン・コンフィデンシャル

キッチン・コンフィデンシャル