ペスト

黒死病つながりで、カミュの「ペスト」を読んだ。北アフリカのある町でペストが発生する。感染の拡大を防ぐために町全体が隔離されて、外との出入りができなくなる。ペストと背中合わせで閉じ込められた中で人がどんな精神状態になって、どう行動するかが詳細に描写されます。医師リウーの視点で、街の様子、病気の拡大する様子、病気との闘いの様子を描いていきます。感染が始まったばかりの頃は、「たいしたことない、そのうち騒ぎもおさまるさ。」という反応。どんどん感染が広がって人がたくさんしに始めても、人々の関心は個人の生活に向けられるばかり。パニックになることもなく、平静な毎日の中で、どんどん感覚が麻痺していく。大変なことなんだけれど、実際にそうなってみると、いつもと変わらない日常生活が営まれていく。でも全体が少し狂っている。そんな描写がリアルだ。

「しかし、ペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです。」
「どういうことなんです、誠実さっていうのは?」と急に真剣な顔つきになって、ランベールはいった。
「一般にはどういうことだか知りませんがね。しかし、僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています。」

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)